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アートと料理の世界へ飛び込む ― 森本シェフにインタビュー

世界を股に掛け活躍する森本正治シェフは、和食を米国人の舌に合うようにブレンドするエキスパートだ。彼は特に大人気テレビであった「料理の鉄人」、同番組の米国版「Iron Shef America 」に出演して以降、世間でも知られることになった。今回は、彼のシェフとして今までの旅路についてインタビューしながらも、アートが彼の仕事にどういった影響を与えているのか追求してみたい。

まずはじめに自己紹介と、シェフとしての経歴を教えていただけますか?

森本正治と申します。僕がシェフになるまでのストーリーはユニークかもしれませんね。日本でキャッチャーとして野球選手を目指していたのですが、肩を故障してキャリアを終えてしまうことになり、地元、広島の町で寿司の勉強を始めたところからスタートしています。すぐに寿司の技術が身に付いたので、24歳の時に初めてのレストランをオープンしました。それから、料理のレパートリーを増やすためにアメリカに移ったのですが、日本とアメリカの食文化が上手く混ざった料理を作りたかったので、チャンスや可能性がないかと必死に探していました。今となっては世界中にレストランを持ち、僕の料理を知らなかったお客様に食べてもらえるようにもなって嬉しい限りです。

料理人としての道を進むことは難しい決断だったのでは?また、特にどういったことで苦労しましたか?

料理の世界でキャリアを積み重ねていくこと中で、本当に大変だったことが何度もありました。集中力、気力、熱意がなくてはできなかったでしょう。一生懸命働いて、技術を習得しますが、それに加えて絶えず新しい技術をまた身に付け、業界でのトレンドに合わせ、常に変化し続けなければならないですから。

シェフとしての一番の思い出は何ですか?

たくさんありますが、1つ挙げるなら「料理の鉄人」と「Iron Chef America」に出演したことですかね。押し寄せるストレスとプレッシャーの中で、いつも以上に集中力を高めなくてはいけませんでした。激しい競争に身を置くことによって、更に上のレベルでのクリエイティビティを発揮することができました。今までテレビに多数出演できたおかげで、数多くのチャンスにも恵まれたと思います。

森本シェフの仕事に対して、アートが与える影響はありますか?

もちろんです。色々なところで影響していますよ。身の回りの様々なアート作品からインスピレーションをもらっています。僕のレストランに行くと、アートが中心となって店の雰囲気を作り上げているので、美しい作品が自分の近くにあることで仕事が非常に捗りますね。最近フロリダ州のマイアミにオープンしたレストラン「Momosan Wynwood」は、マイアミのアート地区にありますよ。 もちろんです。色々なところで影響していますよ。身の回りの様々なアート作品からインスピレーションをもらっています。僕のレストランに行くと、アートが中心となって店の雰囲気を作り上げているので、美しい作品が自分の近くにあることで仕事が非常に捗りますね。最近フロリダ州のマイアミにオープンしたレストラン「Momosan Wynwood」は、マイアミのアート地区にありますよ。

ご自身の仕事をアートとして捉えていますか?

そうですね。料理のアートは独特なので、だからこそなんだと思います。僕は季節ごとに旬な食材で料理を作るのですが、食材に一番合う調理方法を採用します。僕は、料理というのはある種の芸術的なプロセスを取ると考えています。可能な限り一番良い食材を使って、一皿のおいしい料理を作るために敬意と情熱を持って準備することが全てだと思います。

完璧な料理を表現する場合 どういったアート作品になると思いますか?

恐らくですが、完璧な料理を表現するアート作品は、何か複雑なものを創り上げるシンプル且つ個性的なパーツが含まれていると思っています。料理のように、食材一つ一つに役割があって、個々がその役割を果たし、素晴らしい料理になるんです。アート作品も同様かなと。

これは知っておいたほうがいいという作品はありますか?

次の質問に半分答えてしまうことになりますが、千住博さんが描いた滝の絵があって、非常に大きく美しいです。

味覚のプロとして、好きなアーティストは誰ですか?

日本画家の千住博さんですね。僕のレストランや個人的にもいくつか作品を創っていただきました。素晴らしい画家なので、彼の作品を持つことができ光栄です。

日本とアメリカの文化を料理に混ぜ合わせるためにどういったアプローチを取りますか?

僕の場合は、非常にシンプルなアプローチですよ。多くのアメリカの人は、初めての和食に対して少し臆病なんですが、僕のレストランにある全てのメニューはどんな味覚にも合う完璧な和食になっています。和食が初めてのお客様にも楽しんでいただけるように常に新しい料理を追い求めています。それが食の素晴らしい所で、創造には選択肢が無限にあります。

独自のスタイルを作り上げるのにどのくらいの時間を要しましたか? .

独自のスタイルを作り上げるのにどのくらいの時間を要しましたか?正真正銘、自分のものだと言えるまで何年もかかかりました。世界を旅して異なる文化を経験して、糧にし、これぞというスタイルを築き上げました。

5年、10年先の将来の自分に何を見据えていますか。

コロナ禍の間は少しペースダウンして良かったなと感じています。妻とも自宅で過ごす時間ができたので。いつもは絶え間なく世界中を飛び回り自分のレストランに行っていて、新商品の開発や新しいレストラン、コラボ企画などのアイディアを練りながら、自分の事業を中心に据えることができていましたからね。とはいえ、十分にゆっくりと過ごせたので、今は家を飛び出して、自分のレストランを回りたいです。出店できるような新しい場所も見つけたいですし。5年、10年先の未来が何をもたらしてくれるのかが非常に楽しみです。

夢のプロジェクトはありますか?

つまらない言い方になるかもしれませんが、今まで夢のような人生を過ごしてきた気がするんですよね。最近では、自分の看板メニュー全てと集めてきたアイディアが詰まった、多目的なコンセプトを持つ村を作ってみたいと考えるようになっています。

これからキャリアを築き上げようとしている、若いクリエイター達に何かアドバイスはありますか?

「ハードワークは必要である」ということですかね。毎日新しい困難と向き合うことになりますが、きっと自分を成長させてくれるし、自分の技術を向上させてくれるだろうと思います。よく思うのは、誰でも自分の情熱に従い、生きたい人生を築き上げてもいいと思っているんです。食事を含めクリエイティビティはどこにでもあるんですから。 クリエイティブに対する情熱を追いかけたくなるぐらい心を突き動かされた。近くにある森本シェフのレストランへ赴き、そんなシェフが作る料理を味わってみたい。

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